「ホエイプロテインじゃないと筋肉はつかない、むしろソイは逆効果になるのでいますぐやめろ」
「ソイプロテインは女体化する」
「男性ホルモンを低下させて筋肉が落ちる」
ソイプロテインについて検索するとこんなのばっかりでてきますね。見てるとかなり(筋トレ民たちにとって)恐怖をあおるような言葉が並べ立ててあったりして、ソイプロテインって筋肉減少剤かなにか?みたいな扱いを受けてます。
結論から言うと、増量期でもソイプロテインを飲んでOK!!
ソイプロテインだから筋肉がつかない、というわけではありません。
でもね、実はソイプロテインとホエイプロテインには消化吸収の速さやアミノ酸組成などに違いがあります。だから全く同じとは言えないんですな。
というわけでこの記事では、論文やメタ分析(今まで公開された関連する論文の結果をまとめて分析したもの)を参考にしながら
- 増量期にソイプロテインを飲んでもいい理由
- ソイプロテインでも筋肉は増やせるのか
- ホエイプロテインとの違い
について、できるだけ分かりやすく解説します。
増量期でもソイプロテインでOKな理由
まず結論として、増量期にソイプロテインを飲むこと自体に全く問題はありません!
筋肉を増やすために重要なのは、大豆から作られているのか、あるいはミルクから作られているかというタンパク質の種類ではありません。
特に重要なのは、
- 筋トレによる十分な刺激
- 1日に必要なタンパク質を摂ること
- 十分なエネルギーを摂ること
- 睡眠や休養を確保すること
です。
ご存じの通り、プロテインはあくまで「タンパク質を補給するための食品」です。
普段の食事だけで必要なタンパク質を摂れているなら、プロテインを必ず飲まなければ筋肉が増えないわけではありません。
逆に、食事だけではタンパク質が足りない人にとっては、ソイでもホエイでも不足分を補う手段になります。
ソイプロテインでは筋肉がつかない?
これはよくある誤解です。
「ソイプロテイン=筋肉がつかない」というわけではありません。
というわけで論文を二つ。
Lynch et al. (2020)
「ソイとホエイを比較した12週間のランダム化試験(研究に参加した人を、くじ引きみたいにランダムにグループ分けして比較する研究)」で、若い男女61人が参加。んで、ざっくりいうとソイ群・ホエイ群ともに除脂肪量と筋力が増加し、両群の間に有意差はありませんでした。
でもうひとつが
Candow DG, et al. Effects of whey and soy protein supplementation combined with resistance training in young adults. 2006.
こっちは18〜35歳の男女27人を **ソイ・ホエイ・プラセボの3群(各9人)**に分け、6週間のレジスタンストレーニングを行った研究。ソイ群では除脂肪量・ベンチプレス・スクワットの1RMが増加し、ソイとホエイの間に統計的な有意差はなかったよーって感じですね。
つまり、
ソイプロテインでも筋トレをして筋肉を増やすことは可能ってこと!
じゃあなんで世間一般では「ソイは筋肉がつきにくい」みたいな都市伝説で溢れてるの?という疑問が生まれますわな。
というわけでその理由を以下に書いて参ります。
ソイとホエイでは何が違う?
ホエイプロテインは、ソイプロテインと比較して必須アミノ酸の一つであるロイシンを多く含み、吸収も比較的速いことが知られています。ちなみにロイシンは一般的に筋肉合成のスイッチ的な役割として認知されてますね。
🥛 ソイとホエイのロイシン含有量
| ホエイプロテイン | ソイプロテイン | |
|---|---|---|
| タンパク質100gあたりのロイシン | 約8〜11g | 約6〜8g |
| ロイシンの割合 | 約8〜11% | 約6〜8% |
| ロイシン量 | 🟢 多い | 🟡 やや少ない |
つまり、同じ100gのタンパク質を比べると、ホエイのほうがロイシンを2〜3割ほど多く含むことが一般的。
例えば、タンパク質を25g摂った場合のイメージなら、
| ホエイ | ソイ | |
|---|---|---|
| タンパク質 | 25g | 25g |
| ロイシン | 約2.0〜2.8g | 約1.5〜2.0g |
ここだけを見ると、
「やっぱソイダメじゃん!」
と思うかもしれません。というわけでこちらの論文。
Witardら(2023)の研究
Witardらは2023年に、筋トレ後に摂取したタンパク質に含まれるロイシンの量と、筋タンパク質合成(MPS)の関係を調べた複数の研究をまとめました。
🔬 研究内容
- 筋トレ後にタンパク質を摂取した研究を分析
- 摂取したタンパク質に含まれるロイシン量に注目
- ロイシンの摂取量と**筋タンパク質合成(MPS)**の関係を調査
📊 結果
- ロイシンの摂取量とMPSには関連が見られた
- ただし、特に若い人ではロイシンの量だけではMPSの反応を十分に説明できなかった
- つまり、ロイシンが多ければ多いほどMPSが増える、という単純な関係ではなかった
この研究から、ロイシンは筋タンパク質合成に重要なアミノ酸ではあるものの、筋肉の合成量はロイシンの量だけで決まるわけではないことが示されています。
結果として、ロイシン摂取量とMPSの反応には関連が見られたものの、若年者ではロイシン量だけでMPSの大きさを十分に予測できなかった。ただその一方で、高齢者では関連がより明確だったそうな。
参考:
Witard OC, et al. (2023) Association of postprandial postexercise muscle protein synthesis rates with dietary leucine: A systematic review.
ここら辺から考えると若年層はまあいいとしても中年~高齢当たりの人はロイシンの量を意識してみてもいいかもって感じですね。
ソイプロテインは女体化する?
というわけで次にありがちな噂がこれ。そもそもなぜこんな噂が広まったのかというと、
**「ソイにイソフラボンが入っている」から**なんですな。
🌱 なんで「ソイ=女性化」って言われるの?
大まかな流れはこれ。
大豆
↓
イソフラボンが含まれている
↓
イソフラボンは「植物性エストロゲン(phytoestrogen)」と呼ばれる
↓
「エストロゲン」という名前から
↓
「女性ホルモンと同じように作用するんじゃない?」
↓
「男性が大量に摂ったら女性化するのでは?」
↓
「ソイプロテイン=女体化」説が誕生
ただ実際、イソフラボンはエストロゲンと構造が似ていて、エストロゲン受容体に結合することがあります。だから「ホルモンに影響するんじゃないか?」という疑問自体は、完全なデタラメから出てきたわけではない。
ただし、ここで重要なのが、
「エストロゲン受容体に結合する」=「人間の体でエストロゲンと同じ作用をする」
ではないこと。
イソフラボンは本物のエストロゲンとは作用の仕方が異なり、受容体への作用も弱く、組織によって作用が異なると考えられている。
🐀 さらに話をややこしくしたのが「動物実験」
昔から、ラットなどの動物実験でイソフラボンのエストロゲン様作用が報告されたことも、この説の広まりに関係している。
ただし、人間とげっ歯類ではイソフラボンの代謝が違ううえ、動物実験では通常の食事では考えにくいほど高い量が使われているケースもある。
そのため、動物実験の結果をそのまま
「人間の男性がソイプロテインを飲むと女性化する」
とはできない。
👨🔬 じゃあ男性で実際に調べると?
ここが一番大事。
以下は2021年のメタ分析で、男性を対象とした41研究、1,753人以上のデータをまとめて、ソイ・イソフラボン摂取が男性ホルモンに与える影響を調べている。
結果は、
| 指標 | ソイ・イソフラボンの影響 |
|---|---|
| 総テストステロン | ❌ 有意な変化なし |
| 遊離テストステロン | ❌ 有意な変化なし |
| エストラジオール | ❌ 有意な変化なし |
| エストロン | ❌ 有意な変化なし |
| SHBG | ❌ 有意な変化なし |
さらに摂取量や摂取期間で分けても有意な影響は確認されなかった。
というわけでこれに関しては完全に安心して大丈夫です。
Reed et al. (2021)
Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: An expanded and updated meta-analysis of clinical studies
参考:Reed et al., 2021
PubMedで論文を見る
論文全文(ScienceDirect・無料)
結局、ソイとホエイはどっちがいい?
個人的には、
「どちらか一方が絶対に優れている」と考える必要はない
と思います。
ホエイには、ロイシン含有量や消化吸収の速さというメリットがあります。
一方でソイも、タンパク質を補給する食品として十分に利用できますし、何よりコストが安い。
そして筋肉を増やすうえで最も重要なのは、プロテインの種類だけではありません。
例えば、毎日の食事でタンパク質が不足している人が、
「ソイよりホエイのほうが筋肉にいいから」
とプロテイン選びにこだわるより、
まず毎日のタンパク質摂取量を十分にすること
のほうが重要です。
まとめ
増量期でもソイプロテインを飲んでOK!
ソイプロテインだから筋肉がつかない、というわけではありません。
一方で、ホエイはロイシン含有量などの面で有利な特徴があり、研究によってはソイより除脂肪量の増加が大きかったという結果もあります。
しかし、最新のメタ分析ではソイ・ホエイのタンパク質補給による除脂肪量への有意な効果が確認されていないなど、研究結果は一枚岩ではありません。
そのため、
「筋肉を増やしたい男性=絶対にホエイ」
と考える必要はありません。
まずは筋トレを継続し、十分なカロリーとタンパク質を摂る。
そのうえで、食事だけでは足りないタンパク質をソイプロテインで補う。
これで十分、増量期の選択肢になります。
まあ結局のところ、ソイかホエイかで悩みすぎるより、継続して必要な栄養を摂れる方法を選ぶことが大切でしょうな。少しでも効率よく筋肉をつけたい人にとってはホエイも十分メリットを享受できるでしょうから。この辺もまた今度書きたいと思います。

コメント